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今回で、このシリーズもおしまいです。
以前に、長野のM氏から提供された「トパズに見える水晶」を紹介しましたが、
少し前にM氏から「結晶面の多い水晶」(写真参照)の提供を受けていました。

DSC00124_トリミング

ちなみに、上の写真はNEX-6+30mmマクロレンズで撮ったものをトリミングしています。
今回試した結果では、カメラのデジタルズームを使うと、上の写真よりもさらに拡大して、
結晶が画面一杯になります。(デジカメ方式は使えます)

さて、今回の結晶は非常に小さくて、接触測角器は使えませんでした。
そこで、まず実体顕微鏡で結晶面を観察しました。
結論から先に出してしまうと、結晶図は以下の様になりました。

結晶面の多い水晶0

m面がしっかりしていたので、r面とz面は容易に判別できました。
また、s面x面も見えたので、これは左水晶と判りました。
問題はz面の左下の面で、結晶プログラムで確認すると(1-21)に見えました。
【ちなみに、(1-21)は右水晶のs面です】

測角しないのに何故判るかと言いますと、それは以下の類推からです。
不明な面が接するz面との稜線(晶帯軸)が、z(1-11)面とr(101)面との稜線に
平行な事に気付きました。結晶プログラムで色々な面を試したところ、右水晶の
s(1―21)面との稜線が、z(1-11)面とr(101)面との稜線に平行であることが
判りました。ただし、(1―21)面以外にも稜線が平行になる面が有るので、それを
以下の計算で求めてみました。

(h1 k1 l1)面と(h2 k2 l2)面の稜線である晶帯軸[u,v,w]は下式で求まります。
[u,v,w] =[ k1 l2-k2 l1, l1 h2-l2 h1, h1 k2-h2 k1 ]
(私と武さんで地学研究に投稿中の論文には、上式の導出過程が書いてあるので、
ここでの詳細説明は省略します。)

まず、基本となる r(101)面とz(1-11)面の晶帯軸を求めてみると、
u=0*1-(-1)*1=1
v=1*1-1*1=0
w=1*(-1)-1*0=-1
ゆえに[10-1]になります。

次に、z(1-11)面と右水晶のs(1-21)面との晶帯軸は、
u=(-1)*1-(-2)*1=-1+2=1
v=1*1-1*1=0
w=1*(-2)-1*(-1)=-2+1=-1
ゆえに[10-1]となり、平行であることが判ります。(結晶プログラムは正しい)

さらに、z(1-11)面と(1-31)面との晶帯軸を求めてみると、
u=(-1)*1-(-3)*1=-1+3=2
v=1*1-1*1=0
w=1*(-3)-1*(-1)=-3+1=-2
ゆえに[20-2]だが、晶帯軸は変数比なので[10-1]となり、等価です。

同様にして、z(1-11)と(1-x1)の晶帯軸を求めてみると、
u=(-1)*1-(-x)*1=-1+x=x-1
v=1*1-1*1=0
w=1*(-x)-1*(-1)=-x+1=1-x
ゆえに[x-1, 0, 1-x]だが、晶帯軸は変数比なので[10-1]となり、等価です。

纏めると、不明な面のミラー指数候補としては以下の様に沢山あるので、
実際の結晶面が何かを調べるには面角(外角)を測るしかありません。
なお、それぞれの面角は、計算上は以下のようになります。
 面角z(1-11)Λ(1-21)=28.90°
 面角z(1-11)Λ(1-31)=41.78°
 面角z(1-11)Λ(1-41)=48.38°
 面角z(1-11)Λ(1-51)=52.29°

反射測角器で測定した結果は約23°でした。計算値としては28.9°が一番近いです。
思ったよりも誤差が大きいけれども、セッティングがいい加減だからでしょう。
次回があれば、セッティング用の治具(思案中)と実体顕微鏡を使ってみようと思います。


測角前の予想としては最もシンプルな(1-21)面と思いましたので、予想通りでしたが、
左水晶なのに、なにゆえ右水晶のs面が現れているのか不思議です。
右水晶と左水晶の双晶(ブラジル式)では?と思いましたが、つなぎ目は見えませんでした。




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